- 社長インタビュー
社員やその家族、関わる人たちの幸福と人間的成長の実現をしたい

「人が生き 技を磨いて 心を育む」という経営理念を元に社員やその家族の幸福や人間的成長の実現を目指している株式会社ホウユウ代表の太田さん。 人を「活かす」や「生かす」ではなく、人が「生きる」会社であるという理念を大事に、1人1人の人生や仕事におけるキャリアプランに向き合いながら経営に携わっている背景について伺ってきました。
24歳で突如社長になるしかない状況からホウユウを創業
私は高等専門学校を卒業後、道路設計担当としてある大手企業の子会社に入りました。しかし、入社してすぐに親会社に出向することになり、周りは優秀な人ばかりで、高専卒は私ぐらいでした。頑張らなくてはと仕事に向き合っているうちに、3年ほどでどんどん自分に仕事が入ってくる状態になりました。図面の書き方はもちろん、お客様とのやり取りや見積もりの出し方など、一連の仕事ができるようになり、漠然と独立したいと思うようになっていました。そんなタイミングで、高専でお世話になった先輩から会社を作るメンバーにならないかと声をかけていただき、私が24歳の時に共同創業しました。正直、社長をやるつもりは全くなく、あくまでも設計担当として会社の立ち上げメンバーとして参画する予定だったのですが状況が変わり突如、経営側になるしかない状況になりました。まずは社名を決めなくてはと、先輩かつ友である仲間と始めたので、豊かな友という意味から社名をホウユウに決めました。なので、経営理念やビジョンなんてものは一切ないところからのスタートでした。
設計の仕事は鉛筆と机さえあればできた仕事なので、春日部に3LDKのマンションを借りて、住居兼事務所として先輩と暮らしながら会社を立ち上げました。
若くして独立したからか、心配の声や面白がっている人も多かった反面、応援してくれた人もいて、応援してくれる方からの案件紹介で売上がほぼ100%を占める状態で10年ほど事業をなんとか継続できました。
パソコンやCADがまだない時代だったので、朝から晩までとにかく毎日机に向かって手書きで図面を書き、経営に関しては全くわからないし、考えている余裕もなくて、どうやったら家賃が払えるかということしか考えていないような時期を過ごしました。
今振り返ると、大変だったけど楽しかったな〜と思うし、自分の原点だなと感じますね。
共同創業者との別れから気づいた「理念と人の大事さ」
結局、朝から晩まで毎日図面を書き続けるというスタイルは4〜5年はやっていたと思います。時代背景的にもすごく案件が多く忙しい時期だったので、働けば働くほど売上は上がっていきました。事務所に住むことを辞め、春日部から南浦和へオフィスを移動しました。そして、初めてアルバイトの採用もしました。椅子や机やパソコンを新調したり、CADを買ったり、アルバイトに仕事を教えながら事業を拡大していきました。そんな矢先、創業10年目のタイミングで共同創業者の先輩が辞めることになりました。
仕事が増えていくと同時にアルバイト採用も増えていき、社会保険を払うようになりコストもどんどん上がっていきました。毎日忙しくコストも膨れ上がっていくだけの現状に、何のために会社をやっているのかわからなくなったんです。
とにかく生きていくため、お金のことしか考えておらず経営のことは全く考えていなかったので、売上が6,000万ぐらいまで右肩あがりで拡大したところで頭打ちになっていました。
そこでようやく経営について学ばなくてはと気づき、経営者が経営について学ぶ場所である埼玉中小企業家同友会の存在を知りました。たくさんの経営者の話に触れる中で、理念やビジョンが大事であることに気づきました。
共同創業といっても当時私はNo.2だったので、創業社長である先輩に、どんなビジョンがあるんですかとか、社長が変わらないと会社も変わらないですよとか、同友会で聞いた話を先輩に投げかけていました。お互い世帯を持ったタイミングでもあり、改めて今後会社をどうしていきたいか、経営者としてどうしていきたいのかという話をする中で、経営方針の違いで1年ほど悩みましたが、最終的には先輩が会社を辞めることになりました。
先輩が辞めた理由を方向性の違いなんて当時は言っていたけど、理念もビジョンも最初からないから経営や事業における方向性なんかない。私自身が権限が欲しいだけだったと今になって思いますね。それに、自分がやったら上手くいくんじゃないかなんても思っていました。
でも、実際は真逆。どんどん会社の雰囲気も経営も悪くなっていきました。社員は次々辞めていくし、新入社員も倒れたり、社員に対してなんでこんなことも出来ないんだと強く言ってしまったり…。
その結果、社長の言う通りにやっていればいいやと社員の主体性も奪っていました。今大切にしている「人が生きる経営」とは真反対の状態が3年ほど続きました。
自己流でやってきた経営から脱する必要があると感じ、同友会が開催している経営指針セミナーに参加し、3年ぐらいかかって初めて会社の方針や経営指針書ができました。
それまでは税金対策どうしようとか、減価償却で車を購入しようみたいなことばっかり考えていたのですが、経営理念やビジョン、事業計画を初めてしっかり作り上げたんです。それが会社を創業して15期目の話です。
「人が生きる」会社を作りたいと思うようになったきっかけ
ここまでの経験から人が大事であるとは思った反面、正直、設計の仕事は技術力を磨いて仕事をたくさんやってなんぼとどこかでは思っていました。
なので、最初に経営理念を作った時も、「技術」というキーワードが一番最初に来ました。それが、技術も大事だけど、やっぱり人が何より大事だと腹落ちしたのは、初めて経営理念を作ってから9年目のタイミングで、東日本大震災がきっかけです。
「技術」から「人が生きる」に経営理念の言葉の順番を変えました。そして、そもそも企業が人を生かすものでも活かすものでもなく、人は自ら生きているという思いから「人が生きる」という表現にこだわりを持っています。
その結果、現在の経営理念である「人が生き 技を磨いて 心を育む」というものが生まれました。
経営理念って面白くて、言葉の順番を変えるだけで、意思決定の仕方や優先順位が変わるのを身をもって感じました。
「技術」を一番大事にしていた時は、お客さんとのトラブルが多かったり、社内で揉め事がある社員でも技術力があれば一緒に仕事をするスタイルでした。
ただ、どんなに技術力が高くても人としての部分が会社の大事にする部分とズレてしまうと、会社としてもその人自身でみても不十分だよねと感じるようにもなっていきました。
改めて何のために経営しているのかを考えた時に、単に技術力を高めて提供するだけでは私のやりたいことや大事にしてることを達成できないんじゃないかと思うようになりましたし、何より技術と人間力の両方を高めていった方が、みんないい人生を送れるんじゃないかとも思うようになりました。
当然、技術の会社だから、ベースにあるのは技術なんだけど、その前に1人1人が人間であるっていうことと、相手も人間だからお互いの違いを認め合った中で、成果を上げていける組織にしていきたいという考え方に変わっていきました。
「人が生きる」という言葉を掲げたことで変わったこと
事業や取り組み方針、評価体制、個々人の目標の立て方などあらゆる側面を理念をベースに見直していきました。
例えば、評価体制においては、仕事の側面だけではなく、人間性の部分も盛り込むようにしました。面接も、技術と人間性の2軸からお話を聞くようになりました。
今、教育プログラムも作ってますが、仕事におけるできることだけではなく、人として大事な部分である挨拶ができるとか、人を助けることができるとか、そういう人間性の側面も育成することを踏まえてプログラム作りをしています。
また、ホウユウが世の中から必要とされる企業や人材であり続ける状態を目指すってどういうことなのかという問いに対して、社員みんなで話し合ったり、1人1人が考えている大事なこととは一体何なのかを洗い出したりしています。
それが表にまとまっていて、社員それぞれが大事にしている価値観や考えていることを把握できるようにしています。
ここまで来るまで色々と試行錯誤しながらで大変でしたが、今では社員が主体的にいろんなことを決めていて、本当にすごいと感じます。
弊社には総務部門がありますが、就業規則の改訂なども社員からの提案で変わったり、職場のハラスメント対策についても自主的に議題として上げて提案内容がまとめられていたり、業務における改善案なども自分の範疇を超えて提案してくれる流れになっています。
経営理念が確立するまでは、全部自分が決めて、指示してという体制だったところから、社員の主体性が格段に高まりました。それに、自分の人生をよりよくするために意欲的な社員がどんどん増えていきました。
「心を育む」に馳せる思い
経営理念には「心を育む」というキーワードも掲げています。理念を掲げた当初は「心を育む」はごろ合わせで言っていただけで、具体的に何をするか決めてなかったんですよ。それで、トレパニアという就労移行支援の事業を始めたんです。これは、障がいをお持ちの方がCADを習得して就労を目指すための支援施設の運営です。自分たちが持っている技術をもっと地域に役に立つことに活かせないかなと考えていたということと、ダイバーシティの考え方とか障がいを持った人たちとの関わりを長年勉強していて、常に社会課題にどう応えるのかというのが私たちの仕事なので、それを実践したのが今のトレパニアになります。実際に訓練を受けた方が、仕事を獲得し自立の後押しをした実績もあります。
理念の言葉があって、具体的な取り組みを後から作り上げていった感じです。

人生の多くの時間を職場で費やすからこそ、楽しい方がいいに決まってる
弊社社員は、何か与えられるのを待っているという人はいないです。自分の人生、キャリアプランをどうしていきたいかというものをしっかり持っている人が多いです。
多くの時間を職場で費やすわけですから、給料がいいからだけではなく、やりたいことができるとか、楽しく働けるとか、目標を叶えるとかそういう方がいいに決まってる。
ホウユウはこれからもそういう環境を提示していきたいと思っています。
なので、自分の思い描いている人生プランやキャリアプランに沿って目標を作って動かしていくような主体性がある仲間に出会いたいです。
あとは、協調性はもちろん必要ですが、世間一般的にいうお客様受けがいいとかでなくても、自分も周りの社員も困ってたのでちょっと改良してみましたとかそういう動きができる人にぜひお会いしたいです!